温暖化で激減した諏訪湖の御神渡

三上岳彦

  かつては諏訪湖の冬の風物詩であった御神渡が、近年なかなか見られなくなってきています。最近では2013122日に御神渡の出現が確認され、125日に拝観の儀式が行われましたが、その3日後には消滅してしまったそうです。それ以降、現在まで御神渡は現れていません。

 写真は、1998131日に諏訪湖上で行われた御神渡拝観式で、筆者も地理写真家として知られる石井實氏(故人)と一緒に諏訪湖に駆けつけたのですが、結氷した湖上で若者が和太鼓を打ち鳴らす情景は今でも鮮明に思い出されます。

筆者撮影

実際に、御神渡の出現がどれくらい減少しているのか、そしてそれが諏訪の冬季の気温変化と関連があるのか調べてみました。用いた気象データは、諏訪測候所(現AMeDAS諏訪)の1946年~2017年の気温観測値(日最高、平均、日最低)です。その結果、1987年頃から日最高気温、日最低気温ともに急激に上昇していることがわかりました。気温の急変が起こった1987年を境に、前半41年間(1946-1986年)と後半31年間(1987-2017年)に区分して御神渡の出現状況をみると、1986年以前は41年間に28回で4年に3回は出現していたのに対して、1987年以降は31年間に8回で4年に1回しか出現していません。

筆者撮影

冬季の気温が1987年頃からジャンプした後は、年々変動を繰り返しながら明瞭な温暖化傾向は認められません。日平均最高気温は、むしろ徐々に低下の傾向を示しています。このような冬季の特異な気温変動傾向が、地球温暖化によるものなのか、諏訪地方のローカルな現象であるのかは不明ですが、御神渡の形成に重要な役割を演ずる明け方の最低気温が上昇し続けるならば、やがて諏訪の冬の風物詩である御神渡も見られなくなってしまうのではないかと危惧します。

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