地理学会・気象学会での関連集会のお知らせ

下記の通り、日本地理学会および日本気象学会の春季大会で関連集会が開催されます。

日本地理学会2018年春季学術大会

http://www.ajg.or.jp/meeting/2018spring/
会場:東京学芸大学(東京都小金井市貫井北町4-1-1)
第2日目 3月23日(金)
★「気候」セッション
第 5 会 場
9:00-9:20
三上岳彦*・平野淳平(帝京大):気候変動による諏訪湖「御神渡」発生頻度の激減
9:20-9:40
久保田尚之(北海道大)ほか:外国船の航海日誌に記載された気象データから復元する江戸時代後期の日本周辺の気候

★研究グループ例会
13:00-15:00
気候と災害の歴史研究グループ(N204教室)
 三上岳彦(帝京大)・財城真寿美(成蹊大):JCDP(日亜気候データ計画)ウェッブサイトの全面更新について
 平野淳平・三上岳彦(帝京大):江戸と周辺域における18-19世紀複数日記天候記録の相互比較による信頼性の検証
15:00-17:00
都市気候環境研究グループ(N204教室)
 田村望海(神戸大学附属中等教育学校・学):六甲山地からの冷気流による気温低下効果と季節変化の解析

日本気象学会2018年度春季大会

https://www.metsoc.jp/event/2017/11/11/9726
会場:つくば国際会議場(茨城県つくば市竹園2-20-3)
★第3 回気象学史研究会

 気象学史研究連絡会の主催する研究会合を、日本気象学会2018年度春季大会にあわせて以下のとおり5月16日(水)夜・つくば市にて開催します。

 数値天気予報は、第二次世界大戦直後のアメリカ合衆国で研究開発が進展し、日本では1959年に気象庁の現業にとりいれられたことはよく知られています。しかし、日本で数値予報に関するどのような研究開発が進められてきたかはよく知られているとはいえないようです。そこで本会合では、現業開始以前の台風に関する数値予報の研究についての論考をまとめられた科学史家の有賀暢迪氏、気象庁で現業初期から参画された新田尚氏、1970-80年代に現業に参画されその前後にわたって数値予報に関心をもってこられた二宮洸三氏に、それぞれ論じていただくことにしました。なお、新田氏の報告は書面を紹介する形で行います。

 なお、本研究会は気象学史研究に関心を持つ多くの方の間の情報・意見交換をうながすため、日本気象学会員であるかどうかにかかわらずどなたでもご参加いただけます。(当日「参加者名簿」へのお名前の記載にご協力お願いいたします。)

1. 概要
第3回気象学史研究会「日本での初期の数値天気予報」
日時: 2018年5月16日(水)18:00~20:00(日本気象学会2018年度春季大会第1日夜)
場所:つくば国際会議場(茨城県つくば市竹園2-20-3)中会議室201(大会C会場)
プログラム
・新田 尚(元 気象庁)「日本での初期の数値予報」【書面参加】
・二宮 洸三(元 気象庁)「日本における初期の数値予報の発展とその問題点」
・有賀 暢迪(国立科学博物館)「電子計算機以前 — 日本における数値予報研究の始まり」
コンビーナ・司会: 増田 耕一(首都大学東京)

2. 講演要旨
・日本での初期の数値予報 新田 尚【書面参加】
「日本での初期の数値予報」について語るとき、その萌芽として指摘されるのが東大の正野重方教授のイニシアティブによる数値予報グループの結成であろう。東大気象学研究室、気象研究所、気象庁予報部予報課などの有志からなるグループが、日本の初期の数値予報研究とその実用化の推進力となった。その間に、東大助手だった岸保勘三郎氏がプリンストン高等研究所のチャーニー教授の元で数値予報を研究され、米国における数値予報の研究や実用化に向けての情報も収集され、帰国後の実質的なグループの指導者としての役割を果たされた。そして、1959年に気象庁に「大型電子計算機」IBM
704型が導入されて、数値予報の本格的な業務化がスタートした。気象庁予報部電子計算室に集った岸保氏をはじめとする気象研究所、気象庁予報部予報課などからのメンバーが、数値予報業務化推進の中心となった。

・日本における初期の数値予報の発展とその問題点 二宮 洸三
 数値予報の科学史に関して新田ほか(2009)の著作があるが、観点を変えて議論する。
準地衡風の力学は、大規模系に適合する方程式系の導出・その線形解析・診断的解析・数値予測を含むが、導入期には数値予測が強調され、モデルで除去される中小規模現象を軽視する弊害を生じた。
 科学は新概念・法則・事実の発見を目指し、技術は社会的活用を目指すが、相互に関連して進歩する。
 数値気象予報では、科学的根拠の明示、一定時間内の出力のためのデータ処理・客観解析・初期値化・数値積分・出力データ伝達の一連の処理システムの構築、適用限界と精度評価の明示が求められる。利用者(数値予報は予報官の支援資料として位置づけられていた)の気象学的知識の向上も課題であった。
 日本では、組織の業務である技術開発は学術誌への発表になじまない、論文は本来業務ではない等の偏見があり成果は充分に公開されなかった。客観解析・数値予報データの公開もおくれた。
 これらの問題が徐々に改善されたのはプリミティブモデルが定着してからであった。

・電子計算機以前 — 日本における数値予報研究の始まり 有賀 暢迪 (国立科学博物館 理工学研究部)
 1959(昭和34)年、気象庁の電子計算機IBM
704が稼働し、数値予報が現業に取り入れられた。ここに至るまでには、日本国内でのおよそ10年にわたる研究開発があり、報告者は先に、台風の進路予報の取り組みに絞ってこの過程を記述したことがある(有賀,
2016)。ところで、この時期の数値予報研究で興味深い点の一つは、必ずしも電子計算機を使っていないことである。気象学者たちは当初、手で
–図表を活用しつつ– 計算を行っていたのであり、また、電子式ではない機械式の計算機も用いられていた。今回の報告ではこの観点から、1950年代における数値予報研究の経過を整理することを試みたい。なお、この時期の研究開発に直接関わる個人資料(たとえば個々の研究者のノート、研究会の記録や配布資料、やり取りをした手紙といったもの)はほぼ遺されていないと見られるため、本報告は基本的には、この時期に出版された雑誌記事などに基づくものである。

参考文献
 有賀 暢迪, 2016: 台風の数値予報の始まり、あるいは黎明期の計算気象学における問題意識の連鎖。科学史研究第Ⅲ期, 54, 314-326.
 新田 尚, 二宮 洸三, 山岸 米二郎, 2009: 数値予報と現代気象学。東京堂出版,224pp。

お問い合せ先
 山本哲(気象研究所)TEL 029-853-8615 FAX 029-855-7240
 メールでのお問い合わせは気象学史研究連絡会ウェブサイトの問い合わせフォームをご利用ください。
https://sites.google.com/site/meteorolhistoryjp/

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