日本に上陸した台風データセット (1877年‐2020年)
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日本に上陸した台風の定義:上陸地点に最も近い気象台と灯台の最低気圧が1000hPaを下回り、かつ上陸地点の両側の観測点の風向きの変化が逆になる特徴を持つ台風。上陸地点は気象庁と同じ本州・北海道・九州・四国が対象。
作成者:久保田尚之(北海道大学・大学院理学研究院) 期間:1877年‐2020年 データ:上陸日時、上陸地点に最も近い気象台か灯台と、観測した最低気圧、最大風速、風向
文献:
Kubota,H., Matsumoto,J., Zaiki,M., Tsukahara,T., Mikami,T., Allan,R., Wilkinson,C., Wilkinson,S., Wood,K. and Mollan,M., 2021: Tropical cyclones over the western north Pacific since the mid-nineteenth century. Climatic Change 164, 29. https://doi.org/10.1007/s10584-021-02984-7
台風データ1877-2020
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「気候アトラス」偏差図を読む
平野淳平
気候要素(気圧、気温、降水量、日照時間・日射量など)の平均的な状態を把握するため気候学では「平年値」と呼ばれる値を使います。「平年値」とは、30年間の気候要素の平均値として定義されます。地球温暖化など気候変動によって平均値も変わるので、平年値は西暦年の1の位が1になる年ごとに更新されます。例えば、2011 年から 2020 年までの10年間は、1981―2010年の平均値が「平年値」として使われていましたが、2021年に更新され、2021 年から 2030 年の10年間は、1991-2020年の平均値を「新平年値」として使用するようになりました。
天気予報で「平年よりも暖かい(寒い)」と解説されることがありますが、この場合、「平年」とは気温の「平年値」のことを意味します。つまり、気温の「平年値」は、各年の暖かさ(寒さ)などを評価する際の基準なのです。各年の気温と平年値との差を「偏差」と呼びます。気温の場合、正偏差は平年より温暖な状態を意味し、負偏差は平年よりも寒冷な状態を意味します。気温偏差の分布図を描くと、平年より気温が高い地域(正偏差域)と気温が低い地域(負偏差域)の分布が分かります。
降水量についても、気温と同様に「平年値」を基準とした偏差図を描くことができます。ただし、降水量の場合は、平年値に対する降水量の比(平年比)によって偏差を表すことが一般的です。例えば、エルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生した年について、降水量偏差図を描くと、平年より多雨(少雨)な地域が分かります。気候アトラス「世界」のページには、「エルニーニョ発生時の夏季(6月~8月)と冬季(12月~2月)の世界降水量偏差図」を掲載しました。ただし、偏差の基準としては、30年間の「平年値」ではなく、降水量データが得られる1979-2021年の43年間の平均値を使用しました。緑系の色の地域は平年より多雨な地域で、茶系の色は平年より少雨な地域です。エルニーニョの年に熱帯太平洋東部で多雨、西部で少雨になっていることが読み取れます。
さらに、降水量偏差図を海面水温偏差図と比べると、海面水温偏差と降水量偏差の対応関係が分かります。例えば、「エルニーニョ年の冬季DJF海面水温SST偏差分布図」では、熱帯太平洋東部が赤系の色で着色されており、平年より海面水温が高いことが分かります。エルニーニョ年はこの海域の海面水温が高いので、積雲対流が活発化して多雨になるのです。
「ラニーニャ発生時の夏季(6月~8月)と冬季(12月~2月)の世界降水量偏差図」をみると、エルニーニョ年とは逆(熱帯太平洋の東部では多雨、西部では少雨)のパターンが表れています。ラニーニャ年は、熱帯太平洋東部で平年よりも海面水温が下がる(ラニーニャ年の海面水温SST偏差分布を参照)ので、積雲対流活動が抑制され少雨になるのです。
JCDP「気候アトラス」には、今後も様々な気候偏差図を掲載する予定です。高校の地理・地学教育や大学教養課程の講義で「異常気象」やその空間分布について解説する際に、「気候アトラス」に掲載した「偏差図」を活用されることをお勧めします。