日記天候記録
日本全国の図書館・資料館等に保管されている江戸時代の日記は膨大な量になりますが、そこには毎日の天気が記載されているものが数多くあります。JCDPでは、日記記載の天候記録を公開しています。なお、本資料を用いて作成された学術論文・記事・番組等を公開される際には、文献(下記)と出典(JCDPとサイトのURL)を明記して下さい。
福眞吉美(2018):「弘前藩庁日記」のデータベース化とその意義.地学雑誌,127,565-568.[Fukuma,Y. (2018): Making the database of Hirosaki Clan Agency Diary and its significance. Journal of Geography(Chigaku Zasshi), 127, 565-568. (in Japanese with English abstract)]Fukuma2018JG
「弘前藩庁日記天候記録」(弘前市立図書館所蔵)について
福眞吉美氏(元・秋田気象台長)による『弘前藩庁日記ひろひよみ』《御国・江戸》CD-ROMが北方新社より出版されています。JCDPでは、福眞吉美氏と北方新社の許可を得て、そのすべてをPDFファイルで公開しています。なお、CD-ROMにはEXCELファイルも収録されています。
また、書評が「天気」(日本気象学会)に掲載されています。 本だな「弘前藩庁日記ひろひよみ:Vol.1 1661年~1740年」(財城真寿美, 2010)PDF 本だな「弘前藩庁日記ひろひよみ:Vol. 2 1741年~1868年」(平野淳平, 2014)PDF
弘前藩庁御国日記
解説HhKaisetsu
弘前藩庁日記 御国 1661~1700
弘前藩庁日記 御国 1701~1740
弘前藩庁日記 御国 1741~1780
弘前藩庁日記 御国 1781~1820
弘前藩庁日記 御国 1821~1860
弘前藩庁日記 御国 1861~1868
弘前藩庁江戸日記
解説HirosakiEdoNote
弘前藩庁日記 江戸 1661~1700
弘前藩庁日記 江戸 1701~1740
弘前藩庁日記 江戸 1741~1780
弘前藩庁日記 江戸 1781~1820
弘前藩庁日記 江戸 1821~1860
弘前藩庁日記 江戸 1861~1868
【出版情報】
福眞吉美著『弘前藩庁日記ひろひよみ』《御国・江戸》CD-ROM(北方新社) が発刊されています。 本CD-ROMでは、Vol.1とVol.2(御国日記:1661-1868)に加えて、江戸日記(1661-1868)に記載された毎日の天気、関連する気象災害、農事記録、生物季節等の抜粋記事がEXCEL、PDFで閲覧できます。
弘前「晴雨日記」の公開
1865年(元治元年)~1872年(明治5年)の弘前における毎日の天気(欠測あり)が記載された「晴雨日記」(弘前市立図書館所蔵)のデジタルデータを公開します。このデータは、福眞吉美氏(元秋田気象台長:故人)が作成されたもので、ご遺族の許可を得てあります。藩日記の後を継ぐ貴重なデータで、研究等に活用頂ければ幸いです。以下に、この日記の概要を記します。
晴雨日記とは 晴雨日記は、弘前藩士、工藤主膳(他山、富太郎、温克、拙斎、坦々斎等とも称す)の著作である。鎌倉幕府から派遣された工藤家の末裔かもしれない。他の名家としては、南北朝時代の忠臣として知られる北畠家がある位である。ただし、この日記の目的は、分からない。支配地の農作物の予想・把握などが予想される。本書に目的の記述がなくても、先述した、全国に多数ある同名日記の目的と同じかもしれない。 内容は、天保年間から明治5年まで存在し、途中に欠落もある。部分訳を行ったのは、「ひろひよみ」の欠落部分並びに記録がない(幕府がなくなった後)部分である。前者で2年余、後者で3年くらいが新たな情報となる。(福眞吉美記)
弘前晴雨日記1865~1872
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「気候アトラス」偏差図を読む
平野淳平
気候要素(気圧、気温、降水量、日照時間・日射量など)の平均的な状態を把握するため気候学では「平年値」と呼ばれる値を使います。「平年値」とは、30年間の気候要素の平均値として定義されます。地球温暖化など気候変動によって平均値も変わるので、平年値は西暦年の1の位が1になる年ごとに更新されます。例えば、2011 年から 2020 年までの10年間は、1981―2010年の平均値が「平年値」として使われていましたが、2021年に更新され、2021 年から 2030 年の10年間は、1991-2020年の平均値を「新平年値」として使用するようになりました。
天気予報で「平年よりも暖かい(寒い)」と解説されることがありますが、この場合、「平年」とは気温の「平年値」のことを意味します。つまり、気温の「平年値」は、各年の暖かさ(寒さ)などを評価する際の基準なのです。各年の気温と平年値との差を「偏差」と呼びます。気温の場合、正偏差は平年より温暖な状態を意味し、負偏差は平年よりも寒冷な状態を意味します。気温偏差の分布図を描くと、平年より気温が高い地域(正偏差域)と気温が低い地域(負偏差域)の分布が分かります。
降水量についても、気温と同様に「平年値」を基準とした偏差図を描くことができます。ただし、降水量の場合は、平年値に対する降水量の比(平年比)によって偏差を表すことが一般的です。例えば、エルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生した年について、降水量偏差図を描くと、平年より多雨(少雨)な地域が分かります。気候アトラス「世界」のページには、「エルニーニョ発生時の夏季(6月~8月)と冬季(12月~2月)の世界降水量偏差図」を掲載しました。ただし、偏差の基準としては、30年間の「平年値」ではなく、降水量データが得られる1979-2021年の43年間の平均値を使用しました。緑系の色の地域は平年より多雨な地域で、茶系の色は平年より少雨な地域です。エルニーニョの年に熱帯太平洋東部で多雨、西部で少雨になっていることが読み取れます。
さらに、降水量偏差図を海面水温偏差図と比べると、海面水温偏差と降水量偏差の対応関係が分かります。例えば、「エルニーニョ年の冬季DJF海面水温SST偏差分布図」では、熱帯太平洋東部が赤系の色で着色されており、平年より海面水温が高いことが分かります。エルニーニョ年はこの海域の海面水温が高いので、積雲対流が活発化して多雨になるのです。
「ラニーニャ発生時の夏季(6月~8月)と冬季(12月~2月)の世界降水量偏差図」をみると、エルニーニョ年とは逆(熱帯太平洋の東部では多雨、西部では少雨)のパターンが表れています。ラニーニャ年は、熱帯太平洋東部で平年よりも海面水温が下がる(ラニーニャ年の海面水温SST偏差分布を参照)ので、積雲対流活動が抑制され少雨になるのです。
JCDP「気候アトラス」には、今後も様々な気候偏差図を掲載する予定です。高校の地理・地学教育や大学教養課程の講義で「異常気象」やその空間分布について解説する際に、「気候アトラス」に掲載した「偏差図」を活用されることをお勧めします。